順像法では問題文からまっすぐと文字を固定した問題を解いていく手法でした。
しかし、そのような解き方より簡単に解ける問題がある場合があります。
それが、「逆像法」と呼ばれるものです。
順像法と違い、逆像法はある点に対して、求める領域がその点を通過するのかという存在条件を調べる手法です。
具体例的に考えましょう。ある図形y=txみたいなものがあって、順像法ではtに値を代入してみてその様子を調べるやり方といえます。
逆像法というのは、ある点(x,y)をこれに代入してみて出てくるtが果たして存在するのか?ということを調べるやり方です。
例題
実数x,yがx2+y2≦1を満たしながら変化するとき、s=x+y,t=xyとしたときに点(s,t)の動く範囲をst平面上に図示せよ。
題意の不等式を変形した形だけを図示するのはありえません。
出てきた不等式をそのまま処理するのではなく、「何かおかしいぞ」と思う観点が必要です。
また、同値性は常に意識しましょう。
「この問題は実数x,yが存在するから解と係数の関係から判別式だ!」と題意の不等式に付け加えで存在条件を表記するのではなく、ところどころで同値性を意識してください。
題意の不等式を対称式のように変形して(x+y)2−2xy≦1であるからs2−2t≦1です。
(つまり、2s2−1≦t)
しかし、「求まった!」と早とちりして図示をしないでください!
よく考えましょう。求まった不等式は下に凸の放物線の下側の領域を表しており、つまりすごく大きな点(s,t)をとることができます。
でも、条件式には実数x,yかつx2+y2≦1と書かれています。
つまり、s,tが実数として存在する条件を考えなければなりません。
ここから同値変形的にも考えましょう。問題文から、
{ある実数x,yが存在x2+y2≦1⟺{ある実数x,yが存在s2−2t≦1
つまりは、題意の不等式を変形するだけではならない理由は存在条件をおろそかにしているためです。
問題文の条件をすべて書けば、あとは同値変形するだけで解けるのです。
ここから簡潔に答えを出すと、s=x+y,t=xyからx,yはA2−sA+t=0の解となり、
x,yが実数として存在する⟺ 判別式≧0
判別式=s2−4t≧0
∴t≦4s2
したがって、求める領域は以下です(図示は各自で行ってください)
{2s2−1≦tt≦4s2
演習問題
(1) aがすべての実数を動くとき、円Ca:(x−a)2+(y−a)2=a2+1が動く範囲を図示せよ。
(2) a≧0で動くとき、Caの動く範囲を図示せよ。
範囲に点が含まれるか?存在するか?と考えます。
たとえば(1,2)は含まれる?(4,2)は含まれる?…とすべての点に対して考えましょう。
(X,Y)が図形に含まれる時、(X−a)2+(Y−a)2=a2+1を満たす実数aが存在するということです。
つまり、二次方程式a2−2(X+Y)a+X2+Y2−1=0が実数解を持つ条件を考えればいいわけですね。
(2)もほとんど変わりません。a≧0で実数解を持つ条件を考えればいいです。
(1)は、aについての二次方程式の判別式Dとして4D≧0です。
4D=2XY+1≧0
つまり、(1)の答えはxy≧−21を図示したものです。
(2)は、左辺f(a)としてf(a)={a−(X+Y)}2−2XY−1
つまり、f(a)=0が0以上の実数解を持つ条件を考えればその答えは
{x2+y2≦1xy≦−21(y≦−x)(y>−x)
でしょう。
演習問題2つ目
実数x,yに対して2x2+4xy+3y2+4x+5y−4=0 のxの最大値を求めよ。
逆像法も仕上げにかかりましょう。
東大の問題ですが、ある程度簡単に処理ができると思います。
見たことある人も多いかもしれません。
xの最大値を求めるということはxの範囲がわかればいいです。
(x,y)が存在する条件を考えればいいのですが、x,yが実数として存在する条件を二次方程式の時に考えるとは、それはもう判別式しか選択肢はありません!
判別式で考えるということはx,yどちらかの二次方程式として整理する必要がありますが、どちらで整理すればいいでしょうか?
xの範囲を出したいので、判別式にxを登場させなければなりません。
つまり、yの二次方程式として考えればいいわけです!
また、注意としてここまでの判別式で出てきた範囲はあくまで必要条件なので、しっかりxの最大値を与えるyを確認する十分性のチェックは怠らないようにしましょう。
yの二次方程式とみて、3y2+(4x+5)y+2x2+4x−4=0⋯(∗)
yは実数なので、(∗)の判別式D≧0
これを解いて−42+56≦x≦−42−56
つまり、xの最大値は−42−56
この時yの存在は(∗)に代入すればわかります。