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逆像法

時には逆張りも大事です

2025/06/07

順像法では問題文からまっすぐと文字を固定した問題を解いていく手法でした。

しかし、そのような解き方より簡単に解ける問題がある場合があります。

それが、「逆像法」と呼ばれるものです。

順像法と違い、逆像法はある点に対して、求める領域がその点を通過するのかという存在条件を調べる手法です。

具体例的に考えましょう。ある図形y=txy=txみたいなものがあって、順像法ではttに値を代入してみてその様子を調べるやり方といえます。

逆像法というのは、ある点(x,y)(x,y)をこれに代入してみて出てくるttが果たして存在するのか?ということを調べるやり方です。

例題

実数x,yx,yx2+y21x^2+y^2\leqq1を満たしながら変化するとき、s=x+y,t=xys=x+y,t=xyとしたときに点(s,t)(s,t)の動く範囲をstst平面上に図示せよ。

題意の不等式を変形した形だけを図示するのはありえません。

出てきた不等式をそのまま処理するのではなく、「何かおかしいぞ」と思う観点が必要です。

また、同値性は常に意識しましょう。

「この問題は実数x,yx,yが存在するから解と係数の関係から判別式だ!」と題意の不等式に付け加えで存在条件を表記するのではなく、ところどころで同値性を意識してください。

題意の不等式を対称式のように変形して(x+y)22xy1(x+y)^2-2xy\leqq1であるからs22t1s^2-2t\leqq1です。

(つまり、s212t\frac{s^2-1}{2}\leqq t)

しかし、「求まった!」と早とちりして図示をしないでください! よく考えましょう。求まった不等式は下に凸の放物線の下側の領域を表しており、つまりすごく大きな点(s,t)(s,t)をとることができます。

でも、条件式には実数x,yx,yかつx2+y21x^2+y^2\leqq1と書かれています。

つまり、s,ts,tが実数として存在する条件を考えなければなりません。

ここから同値変形的にも考えましょう。問題文から、

{ある実数x,yが存在x2+y21    {ある実数x,yが存在s22t1\begin{equation*} \begin{cases} \text{ある実数$x,y$が存在} \\ x^2+y^2\leqq1 \\ \end{cases} \iff \begin{cases} \text{ある実数$x,y$が存在} \\ s^2-2t\leqq1 \\ \end{cases} \end{equation*}

つまりは、題意の不等式を変形するだけではならない理由は存在条件をおろそかにしているためです。 問題文の条件をすべて書けば、あとは同値変形するだけで解けるのです。

ここから簡潔に答えを出すと、s=x+y,t=xys=x+y,t=xyからx,yx,yA2sA+t=0A^2-sA+t=0の解となり、 x,yx,yが実数として存在する    \iff 判別式0\geqq 0

判別式=s24t0判別式=s^2-4t \geqq 0

ts24\therefore t \leqq \frac{s^2}{4}

したがって、求める領域は以下です(図示は各自で行ってください)

{s212tts24\begin{equation*} \begin{cases} \frac{s^2-1}{2}\leqq t \\ t \leqq \frac{s^2}{4} \\ \end{cases} \end{equation*}

演習問題

(1) aaがすべての実数を動くとき、円Ca:(xa)2+(ya)2=a2+1C_a: (x-a)^2+(y-a)^2=a^2+1が動く範囲を図示せよ。

(2) a0a\geqq 0で動くとき、CaC_aの動く範囲を図示せよ。

範囲に点が含まれるか?存在するか?と考えます。

たとえば(1,2)(1,2)は含まれる?(4,2)(4,2)は含まれる?…とすべての点に対して考えましょう。

(X,Y)(X,Y)が図形に含まれる時、(Xa)2+(Ya)2=a2+1(X-a)^2+(Y-a)^2=a^2+1を満たす実数aaが存在するということです。

つまり、二次方程式a22(X+Y)a+X2+Y21=0a^2-2(X+Y)a+X^2+Y^2-1=0が実数解を持つ条件を考えればいいわけですね。

(2)もほとんど変わりません。a0a\geqq0で実数解を持つ条件を考えればいいです。

(1)は、aaについての二次方程式の判別式DDとしてD40\frac{D}{4}\geqq0です。 D4=2XY+10\frac{D}{4}=2XY+1\geqq0

つまり、(1)の答えはxy12xy\geqq -\frac{1}{2}を図示したものです。

(2)は、左辺f(a)f(a)としてf(a)={a(X+Y)}22XY1f(a)=\{a-(X+Y)\}^2-2XY-1

つまり、f(a)=0f(a)=000以上の実数解を持つ条件を考えればその答えは

{x2+y21(yx)xy12(y>x)\begin{equation*} \begin{cases} x^2+y^2\leqq1 & \text{($y\leqq-x$)} \\ xy\leqq -\frac{1}{2} & \text{($y>-x$)} \end{cases} \end{equation*}

でしょう。

演習問題2つ目

実数x,yx,yに対して2x2+4xy+3y2+4x+5y4=02x^2+4xy+3y^2+4x+5y-4=0xxの最大値を求めよ。

逆像法も仕上げにかかりましょう。 東大の問題ですが、ある程度簡単に処理ができると思います。 見たことある人も多いかもしれません。

xxの最大値を求めるということはxxの範囲がわかればいいです。

(x,y)(x,y)が存在する条件を考えればいいのですが、x,yx,yが実数として存在する条件を二次方程式の時に考えるとは、それはもう判別式しか選択肢はありません!

判別式で考えるということはx,yx,yどちらかの二次方程式として整理する必要がありますが、どちらで整理すればいいでしょうか?

xxの範囲を出したいので、判別式にxxを登場させなければなりません。

つまり、yyの二次方程式として考えればいいわけです!

また、注意としてここまでの判別式で出てきた範囲はあくまで必要条件なので、しっかりxxの最大値を与えるyyを確認する十分性のチェックは怠らないようにしましょう。

yyの二次方程式とみて、3y2+(4x+5)y+2x2+4x4=0()3y^2+(4x+5)y+2x^2+4x-4=0\cdots(*)

yyは実数なので、()(*)の判別式D0D\geqq0

これを解いて2+564x2564-\frac{2+5\sqrt{6}}4\leqq x \leqq -\frac{2-5\sqrt{6}}{4}

つまり、xxの最大値は2564-\frac{2-5\sqrt{6}}{4}

この時yyの存在は()(*)に代入すればわかります。