順像法は、基本1文字を固定することにより、他の変数がどう動くかを考える手法です。
イメージ的には、問題文の文章からまっすぐ解いていくやり方です。
1文字固定
x≧0 かつ y≧0 かつ x+y≦2 を満たすx,yに対し、
z=2xy+ax+4yの最大値を求めよ。ただしaは負の定数とする。
ここではx,yに関係式は与えられていないので独立変数であり、文字の消去は考えられません。
ですから、2変数を同時に動かすのはすごく難しいことです。
そこでどうするかというと、どちらかの変数を固定し、片方だけ動かすという考え方をします。
キーポイントとして、固定する変数は複雑なものがいいです。具体的に言えば次数が高かったり、出現回数が高い変数を固定するのがおすすめです。
これはなぜかというと、難しい変数を固定し定数としてあげることで、残った変数の式が簡単になるからです。
例えばz=x3y+4x2y+3xはどちらを固定するかというと、xです。xは3次に対してyは1次で、固定後はyの単なる1次式に帰着できますからね。
さて、この問題ではどちらを固定しましょうか。次数は同じですから、どちらでも良いと思いますが、しいて言うならxを固定しましょう。
なぜなら、xの係数にaがついており、少しややこしいからです。(本問ではaは負の定数とされているのでそこまで面倒ではないですが、aが正負どちらもとるときは面倒になるので迷わずxを固定します。)
xを固定するのでyの範囲を考えましょう。
x=Xと固定したとき、X≧0かつy≧0かつy≦−X+2となるので、
X≧0かつ0≦y≦−X+2となります。
この時、z=(2X+4)y+aXという1次関数で、X≧0から傾き2X+4≧0となり、つまりはzはyの単調増加関数ですね。
したがって、zの最大値はyの最大のところでとって、y=−X+2でzの最大値(2X+4)(2−X)+ax=−2X2+aX+8
ここでXを動かすことで最大値が具体的にわかります!
ただし、Xの範囲が重要です。X≧0は題意からわかり、またx+y≦2より合わせて0≦X≦−y+2となります。
y≧0から、0≦X≦2となります。
z=−(X−4a)2+16a2+8から軸X=4a、a<0から4a<0。
つまりは0≦X≦2の範囲ではもちろんzは単調減少関数です。
したがって、zの最大値はX=0で、z=8となりました。(x=0,y=2)
ファクシミリの原理
t≧−1の範囲でtが動くとき、直線y=2tx−t2がxy平面上で通過する領域を図示せよ。
座標平面の場合、xをある値で固定すればその点でのyの範囲がわかります。
そこで、x=Xと固定して、yの動く範囲を求め、それをすべてのXに対して考えれば、いわばFAXのように少しずつ通過領域が浮かび上がります。
このことから月刊誌「大学への数学」ではファクシミリの原理と呼ばれる手法です。(この呼び方はメジャーでないので、ファクシミリの原理と答案に書かないようにしてください)
通過領域の問題でよく使われる手法なのでしっかり押さえておきましょう。
先ほどの解法と異なるアプローチですが、座標平面上での通過領域の題ではうまくいくことが多いです。
「なぜx以外にtなどの複雑な文字があるのにそれを固定しないんだ」と思うかもしれませんが、それはtが定数として扱われているためであり、かつ最終的な図示の目標はxy平面上であり、tはそこに表れないためです。
x=Xでカットしたスライスに対してtを動かせば、それすなわちyの範囲がわかることになる、と考えればいいでしょう。
では問題に取り掛かりましょう。
ここではファクシミリの原理的にx=Xとxを固定して考えましょう。
するとy=2tX−t2=−(t−X)2+X2となります。
このような考え方から、y=−(t−X)2+X2をtの二次関数と見れば、tの範囲はt≧−1ですから、この範囲でのyの最大最小を場合分けして求めていきましょう。
軸の動く二次関数の最大最小問題へと帰着されます。
[i] X≧−1のとき
yはt=Xで最大値X2をとり、最小値はない。
∴y≦X2
[ii] X<−1のとき
yはt=−1で最大値−(X+1)2+X2=−2X−1をとり、最小値はない。
∴y≦−2X−1
[i][ii]より、求める領域は以下です。(図示略)
{y≦x2y≦−2x−1(x≦−1のとき)(x<−1のとき)
演習問題
正の実数aに対し、放物線C: y=ax2+4a1−4a2でaが正の実数全体を動くとき、Cの通過領域を求めよ。
これは東大です。やり方は全く変わらず、ここでもx=Xと固定して考えましょう。
一部極限的な考え方を用いますが、考えようによって未習でも解けないことはありません。
x=Xと固定します。yのとりうる範囲を求めていきましょう。
y=aX2+4a1−4a2=a(X2−1)+4a1
ここからaを動かしてyのとりうる範囲を求めます。
[i] X2−1=0の時
y=4a1(a>0)のとる範囲y>0
[ii] X2−1<0の時
どちらの項も単調減少関数であり、a→0でyは∞にとび、a→∞でyは−∞にとびます。
ここから、yは実数全体をとることがわかります。
極限的な書き方をすればa→0limy=∞かつa→∞limy=−∞ということになりますが、言っていることは同じです。
数式の見た目に惑わされないようにしましょう。
[iii] X2−1>0の時
相加平均≧相乗平均から、y≧24aa(X2−1)=X2−1
したがってyのとる範囲はX2−1≦y
[i][ii][iii]から、求める範囲は以下(図示略)
⎩⎨⎧x2−1≦y0<yyは実数全体(x<−1,1<xのとき)(x=±1のとき)(−1<x<1のとき)