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高校から微積物理を始める: 公式物理との違いや必要な数学を例題も交えて解説

高校内容では深くわからないところも完全解明できます!

2025/03/31

微積物理とは何か

まず、高校で学ぶ物理とは、公式ベースで数学はあまり使われていません。

これはなぜかというと高校の指導要領的に数学と習う期間が合わないためです。

ですが、数学を使ったほうが物理は一気に面白く、受験の話でいうと簡単になります。

そして実際数学を用いたほうがはるかに学びになることも多いです。

そこで、微積物理というやり方が今高校生の間に広まりつつあります。

とはいっても、微積物理とは単なるキャッチコピーで、本来の物理がこの微積物理であり、高校物理はそれを数学を使わずともわかるように砕いた公式物理といったほうがいいと思います。

微積物理はどんな人向けでどう良いのか

微積物理は、まず数学をやった人向け、数学が苦手でない人向けです。

この物理で用いるような数学はベクトル、微積など多岐にわたりますが内容が数学の応用問題のように難しいわけではありません。

いろいろな数学の基礎を身に着ければ十分できる内容です。

基礎を身に着ける場合は、黄色チャートなどで良いと思います。

また、一部大学数学があるとさらに便利です。

とはいっても、微分方程式の分野ができれば他は何も要りません。

このような物理で使う基本的な大学数学をわかりやすく学ぶなら「高校レベルからはじめる! やさしくわかる物理学のための数学」という本が本当におすすめです。

高校内容で十分理解できる内容です。

微分方程式以外の線形代数などの内容も乗っているんですが、微積物理を始めるだけなら微分方程式とちょっとベクトルをやれば他はパスしてOKです。

またわからなくなればその都度学ぶとよいでしょう。

そして、微積物理の良さというのは、現象理解が容易になる点と、驚くほど問題が解きやすくなる点です。

まず、物理学というのはもともと微積を含めた数学をふんだんに用いて記述されているものなので、それなしで現象理解を行うとなるとかなり不利になります。

そして、高校の公式物理をベースに大学入試問題は作られています。

高校物理では主にいろんな公式を組み合わせて問題の値を出していくという方針で問題を解いていきますが、微積物理はそのようなことはする必要はありません。

力学でいうなら、極論運動方程式と、問題に沿った条件さえ特定できればどんな運動でも解析することができます。

速く解くことを考えても、エネルギーや運動量の保存則などを理解することができれば十分です。

こう考えると、公式をすべて覚えるのが面倒だと思いませんか?

微積物理を始めよう(力学)

位置・速度・加速度の関係

問題を簡単にするために一次元で考えて行きましょう。

位置xxに対して、速度vvというのは、

v=ΔxΔtv = \frac{\Delta x}{\Delta t}

で表されるのでした。

ですが、この速度というのはΔt\Delta tと時間が変化している間の平均速度であり、速度がぐにゃぐにゃと急激に変わるとき、それぞれの瞬間の速度はわかりません。

そこで、時間幅をずっと小さくします。xxは時刻ttの関数ですから、vvttの関数となるでしょう。

極限をとると

v(t)=limΔt0x(t+Δt)x(t)Δtv(t) = \lim_{\Delta t \to 0} \frac{x(t + \Delta t) - x(t)}{\Delta t}

となります。

これはつまり、

v=dxdtv = \frac{dx}{dt}

の関係が成り立っているということです。 同様に考えれば加速度aaに関しても

a=dvdt=d2xdt2a = \frac{dv}{dt} = \frac{d^2x}{dt^2}

が成り立っていることがわかります。

つまり、xxを微分すればvv、微分すればaaとなります。

逆に積分すればxが積分定数付きで求まりますが、この積分定数を消去するには初期条件が必要となります。

例題を解いてみよう

微積物理の考え方を用いて例題を解いてみましょう。

初速度をx軸方向に+v0[m/s]+v_0 \mathrm{[m/s]}で質量m[kg]m \mathrm{[kg]}物体を投げる。

初期位置を原点として、その後時刻t[s]t \mathrm{[s]}での位置x(t),y(t)x(t), y(t)を求めよ。 (x(t)x(t): x軸方向、y(t)y(t): y軸方向)

解答

運動方程式を立てると、x軸方向は

max=0ma_x=0

なので、a=0a=0、つまり2回積分してx=C1t+C2x=C_1t+C_2

また、初期条件x(0)=0x(0)=0vx(0)=v0v_x(0)=v_0を用いて、積分定数を決めていく。

まずx(0)=0x(0)=0よりC2=0C_2=0

また、vx=C1v_x=C_1で、vx(0)=v0v_x(0)=v_0より、C2=v0C_2=v_0

x(t)=v0t\therefore x(t) = v_0 t

これは等速運動の式を同じですね!

また、y軸方向を考えると重力が働くので

may=mgma_y=-mg

よってay=ga_y=-g

これを積分するとvy=gt+D1v_y=-gt+D_1y=12gt2+D1t+D2y=-\frac{1}{2}gt^2+D_1t+D_2

初期条件から、y(0)=0y(0)=0vy(0)=0v_y(0)=0

これを用いればD1=0D_1=0D2=0D_2=0

y(t)=12gt2\therefore y(t)=-\frac{1}{2}gt^2

これは自由落下の式と同じになっています!

微積物理の流れ(力学)

例題で扱ったように、力学の微積物理では主に

  1. 力を図示して運動方程式を立てる
  2. 運動方程式は微分方程式なので解く
  3. 初期条件・束縛条件を代入して積分定数を消去する
  4. 運動の関数が得られるのでそれを用いて問題に対応する

という4手順の流れがほとんどです。

また、今回の内容では、単純に積分することで求まりましたが、単振動(F=kxF=-kx)や、空気抵抗(F=mgkvF=mg-kv)などが入ってくると微分方程式を解く必要が出てきます。(単純には解くことができません)

しかし、その微分方程式さえ解けば多くの入試物理は超単純な作業です。

おわりに

微積物理の良さを知っていただけたでしょうか。

今回取り上げた内容は微積のみでしたが、本来はベクトル解析の内容、一部線形代数の内容なども学ぶともっと深まっていきます。

そう考えると、特に大学で物理学科に行きたいような人たちは、高校の段階で大学数学・物理をやるといいかもしれません。

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