本記事では高校数学でもよく出る円束・直線束の考え方について解説します。
円束・直線束について
円束・直線束どちらも2つの図形の方程式が与えられ、それらの交点をすべて通る図形の方程式を表すものです。
ではどのような形で表されるのでしょうか。
一般に成り立つこと
一般に、2つの図形の方程式f(x,y)=0とg(x,y)=0について、少なくともどちらかは0でない2つの実数a、bに対して
af(x,y)+bg(x,y)=0
が表す図形は元の2つの図形の交点をすべて通る。
なぜ成り立つのか
では、ラフに証明をしていきましょう。
f(x,y)=0、g(x,y)=0というのは、それぞれx、yの方程式ということで、つまりは何かの平面図形を表す方程式です。
これに対して、交点を(X,Y)としましょう。
交点ということは、どちらの図形も通るという事なので、2つの方程式はどちらも成立して、
f(X,Y)=0、g(X,Y)=0が成り立つ事がわかると思います。
では、af(x,y)+bg(x,y)=0について、(x,y)=(X,Y)を代入するとこの式は成立します。
つまり、与式は交点である(X,Y)を通るという事です。
ここで、(X,Y)について何の制限もかけていないので、全ての交点に対して同様の議論が成り立ち、与式は交点を全て通るということになります。
なぜどちらも0だとダメなのか
af(x,y)+bg(x,y)=0
上式を与えるとき、a,bは少なくともどちらかは0でない実数としました。
では、なぜa=b=0ではダメなのでしょうか。
これは単純に、a=b=0を代入してみましょう。すると、上式は
0⋅f(x,y)+0⋅g(x,y)=0
となり、0=0が得られます。
これは何の情報もない式なので、使えないということです。
学校でならう形との比較
学校で習うのは、以下のような形だと思います。
kf(x,y)+g(x,y)=0
これは、af(x,y)+bg(x,y)=の両辺をbで割って、
baf(x,y)+g(x,y)=0
このbaをkとしたら成立します。
基本的に未知数は少ない方がわかりやすいのでこっちの式の方がわかりやすいです。(また、この式だと確実に片方の係数は1になるのでkが何であろうと0でないという条件も満たします)
ただ、どっちにkをつければいいか分からないというときは二文字で考えてもいいかもしれません。
例題から学ぶ
直線束
2直線 2x+y−1=0 と 4x−y+2=0の交点を通る直線のうち以下の条件を満たす方程式を求めよ。
(1) 点(0,2)を通る直線
(2) 直線x+y+1=0と平行な直線
(3) 直線x+y+1=0と垂直な直線
まずは、交点を通る直線をk(2x+y−1)+4x−y+2=0⋯(∗)とおいて考えましょう。
(1)の考え方
(∗)
は点(0,2)を通るので、
(x,y)=(0,2)
を代入して
k
の値が求まります。
すると、k=0となったので、それを代入すれば(1)を満たす直線は
4x−y+2=0
となります。
(2)の考え方
平行ということは傾きについて考えるので、(∗)をx,yについて整理すると、
(2k+4)x+(k−1)y+(−k+2)=0
となります。
ここで、y=の形に直して傾きを比較してもよいですが、ここでは公式を使ってみましょう。
[公式] a1x+b1y+c1=0とa2x+b2y+c2=0について
平行である ⟺ a1b2−a2b1=0
垂直である ⟺ a1a2+b1b2=0
このような公式があります。
証明は教科書に載っていると思います。
これを使うと、
1⋅(k−1)−1⋅(2k+4)=0
つまり、整理して解けば k=−5です。
これを(∗)に代入して整理すれば、
6x+6y−7=0
となります。
(3)の考え方
(2)の公式に代入するだけです。
円束
2円 x^2+y^2=1と x^2+y^2+4x+2y=4の交点を通る直線の方程式を求めよ
交点を通る図形は、f(x,y)=0,g(x,y)=0に対してkf(x,y)+g(x,y)=0で与えられました。
ここで、与えられた円の方程式を=0の形に直してから使いましょう。
つまり、2円を通る図形の方程式はk(x2+y2−1)+(x2+y2+4x+2y−4)=0で表されます。
問題では、直線を求めなさいと書かれていたので、x2やy2の項は要りません。
x2やy2の項を消去するために、k=−1を代入します。
そして整理すると、
4x+2y−3=0
という直線を求めることができました。
まとめ
数学の問題で*「交点を通る」*と言われたら、交点をごり押しで求めることもできますが、それで時間のかかってしまう問題などはこのような束の考え方を利用すると、シンプルに解くことができます。
難関大志望の方は必携の考え方なので、ぜひ覚えておきましょう。